disguise5
「・・・・リン様・・・」
帰ると言っておきながら、やっぱり気になって様子を見ていたイオンは、握り拳をわなわなと震わせていた。
そしてその日の夕食の席では、相変わらずの食欲であるソフィアに加え、イオンが超がつくほど不機嫌であった。
メロディーにもらったコロッケを、フォークでグサグサと刺している。
見ていて少し怖い。
「おかわり!」
そんなことに気づいていないソフィアは、元気よく茶碗を差し出す。
「ソフィア!あんたいい加減にしなさいよね!」
すると、イオンは突然立ち上がって怒鳴り始めた。
「一体どれだけ食べれば気が済むの!?もっと女の子らしくしたらどうなのよ!!」
怒られた当の本人は、なぜイオンがこんなにも怒っているのかわからず、ポカンとしている。
「イ・・・イオン・・・どうしたんだ、いきなり・・・」
リンはそんな彼女を落ち着かせようとするが、にらまれたので口を閉じた。
「ごちそうさま!悪いけど残させてもらうわ。」
「え!?イオン、もう食べないの?じゃあ、あたしにちょうだい!」
怒られてもまだ食べようとするソフィア。
イオンはもうため息をつくしかなかった。
「イオンってば、どうしてあんなに怒ってるのかな?」
食器洗いしているリンを手伝いながら、ソフィアは言った。
「さぁな。何かあったんだろ。」
「何かって?」
「知るかよ。とりあえず癪に障ったんだろ。お前の食欲が。」
「あ・・・あたしのせい・・・」
・・・どうしよう・・・。と、珍しく落ち込んでいる。
いつもケンカばかりしてるのに、こんなこともあるんだな・・・
「謝っとけばいいんじゃないのか。それが一番安全だと思うけど。」
「わかった。そうする。」
「あと、もう少し食べる量を減らしてくれれば、俺は嬉しいんだけどな。」
ため息交じりに言うと、ソフィアはなぜか驚いた顔をした。
「あたし・・・そんなに食べてる・・・・?」
――自覚してなかったのか!
衝撃の事実に、リンはさらにため息をつきたくなった。
「ご、ごめんなさい・・・・。この頃すごくお腹が減るんだよね・・・・」
そう言われて、ソフィアの一日を思い返してみた。
ほとんど家にいないな・・・
「お前、まだ一人で修業してるのか?」
「え?うん。そうだよ。――大丈夫!変な奴とかとは会ってないよ。いつも一人。」
リンを安心させるためか、彼が何かを言う前にソフィアは自分が大丈夫だということを示した。
そう言われると、何も言えない。
「それならいいが・・・大ケガとかはするなよ。」
「うん!」
あまりにも嬉しそうな顔で頷かれて、リンは何だか複雑な気分になった。
リンに言われた通り、ソフィアはイオンに謝った。
しかし・・・
「はぁ?私に謝られても!」
かなり不愉快な顔をされてしまった。
「で、でも・・・先輩にも言われたんだ。あたしの食べる量が多いから、それがイオンの癪に障ったんじゃないかって・・・。だからあたし、もうあんなに沢山食べないし・・・」
イオンは読んでいた雑誌をバン!と、机にたたきつけた。
「ええ、そうよ。確かにあんたのあの食事の量にはうんざりしてるわ。けどね!そういうことじゃないのよ!」
「じゃあ・・・・何・・・・・?」
イオンの迫力に少し怯えながら、ソフィアは尋ねた。
けど、にらまれてしまった。
「あんたねぇ・・・・リン様に好きになってもらいたかったら、もっと女の子らしくするとかそういう努力をしなさいよ!」
「た、例えば・・・・・?」
そんなの自分で考えなさいよ!と言われるかと思ったが、
「その中途半端の長さの髪を長くして、綺麗に手に入れするとか!リボンでポニーテールにするとか!もっとオシャレな服を着るとか!誰にでも優しくできる素敵な女性になるとか!」
と、完全にメロディーの特徴ではあるが、怒りながら教えてくれた。
「髪・・・・・」
残念なことに、ソフィアにはその部分しか聞き取れなかった。
「そうよ!あんた、伸ばしてるんでしょ?だったらもうちょっと綺麗にしなさいよ。」
あと少し伸ばせば、背中の中心辺りまできそうな長さになった。
髪を長くすれば、女の子らしくなるかと思って、伸ばしてきたのだが・・・・
「そうだね・・・・。ありがとう、イオン。」
このイオンのアドバイスが、違う方向に動くとはイオンは思いもしなかった。
「ソフィア!?」
翌日の夕暮れ時、玄関先でリンの叫ぶ声がした。
それを聞いて、イオンは様子を見に行く。
そこにはいつになくボロボロになったソフィアがいたのだが・・・・
「お前、どうしたんだ!その髪!」
伸ばしていたはずのソフィアの髪が、短くなってしまっていた。
これにはさすがのイオンも驚く。
「髪・・・伸ばしてたんじゃないのか?」
リンが驚きながら、ソフィアの短くなってしまった髪に触れる。
ソフィアはと言うと、ボロボロであるにも関わらず、ニコニコしていた。
「木に引っ掛かって取れなくなっちゃったんだ。」
「だからって・・・」
「うん。でもね、修業の妨げになるなら、仕事の妨げにもなると思ったんだ。」
嬉しそうに彼女は話す。
「あたしは決めたんだ。絶対八代目になるって。髪なんて伸ばしてる場合じゃないんだ!」
つまりこれは、ソフィアがそうじ屋八代目になるという決心の表れだったのだ。
「ソフィア・・・・」
ソフィアはリンに頭をなでられ、まんざらでもなさそうな顔をしている。
そして、イオンは気がついた。
リンが、メロディーに見せていたものとはまた別の笑顔であるということに・・・
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「・・・・リン様・・・」
帰ると言っておきながら、やっぱり気になって様子を見ていたイオンは、握り拳をわなわなと震わせていた。
そしてその日の夕食の席では、相変わらずの食欲であるソフィアに加え、イオンが超がつくほど不機嫌であった。
メロディーにもらったコロッケを、フォークでグサグサと刺している。
見ていて少し怖い。
「おかわり!」
そんなことに気づいていないソフィアは、元気よく茶碗を差し出す。
「ソフィア!あんたいい加減にしなさいよね!」
すると、イオンは突然立ち上がって怒鳴り始めた。
「一体どれだけ食べれば気が済むの!?もっと女の子らしくしたらどうなのよ!!」
怒られた当の本人は、なぜイオンがこんなにも怒っているのかわからず、ポカンとしている。
「イ・・・イオン・・・どうしたんだ、いきなり・・・」
リンはそんな彼女を落ち着かせようとするが、にらまれたので口を閉じた。
「ごちそうさま!悪いけど残させてもらうわ。」
「え!?イオン、もう食べないの?じゃあ、あたしにちょうだい!」
怒られてもまだ食べようとするソフィア。
イオンはもうため息をつくしかなかった。
「イオンってば、どうしてあんなに怒ってるのかな?」
食器洗いしているリンを手伝いながら、ソフィアは言った。
「さぁな。何かあったんだろ。」
「何かって?」
「知るかよ。とりあえず癪に障ったんだろ。お前の食欲が。」
「あ・・・あたしのせい・・・」
・・・どうしよう・・・。と、珍しく落ち込んでいる。
いつもケンカばかりしてるのに、こんなこともあるんだな・・・
「謝っとけばいいんじゃないのか。それが一番安全だと思うけど。」
「わかった。そうする。」
「あと、もう少し食べる量を減らしてくれれば、俺は嬉しいんだけどな。」
ため息交じりに言うと、ソフィアはなぜか驚いた顔をした。
「あたし・・・そんなに食べてる・・・・?」
――自覚してなかったのか!
衝撃の事実に、リンはさらにため息をつきたくなった。
「ご、ごめんなさい・・・・。この頃すごくお腹が減るんだよね・・・・」
そう言われて、ソフィアの一日を思い返してみた。
ほとんど家にいないな・・・
「お前、まだ一人で修業してるのか?」
「え?うん。そうだよ。――大丈夫!変な奴とかとは会ってないよ。いつも一人。」
リンを安心させるためか、彼が何かを言う前にソフィアは自分が大丈夫だということを示した。
そう言われると、何も言えない。
「それならいいが・・・大ケガとかはするなよ。」
「うん!」
あまりにも嬉しそうな顔で頷かれて、リンは何だか複雑な気分になった。
リンに言われた通り、ソフィアはイオンに謝った。
しかし・・・
「はぁ?私に謝られても!」
かなり不愉快な顔をされてしまった。
「で、でも・・・先輩にも言われたんだ。あたしの食べる量が多いから、それがイオンの癪に障ったんじゃないかって・・・。だからあたし、もうあんなに沢山食べないし・・・」
イオンは読んでいた雑誌をバン!と、机にたたきつけた。
「ええ、そうよ。確かにあんたのあの食事の量にはうんざりしてるわ。けどね!そういうことじゃないのよ!」
「じゃあ・・・・何・・・・・?」
イオンの迫力に少し怯えながら、ソフィアは尋ねた。
けど、にらまれてしまった。
「あんたねぇ・・・・リン様に好きになってもらいたかったら、もっと女の子らしくするとかそういう努力をしなさいよ!」
「た、例えば・・・・・?」
そんなの自分で考えなさいよ!と言われるかと思ったが、
「その中途半端の長さの髪を長くして、綺麗に手に入れするとか!リボンでポニーテールにするとか!もっとオシャレな服を着るとか!誰にでも優しくできる素敵な女性になるとか!」
と、完全にメロディーの特徴ではあるが、怒りながら教えてくれた。
「髪・・・・・」
残念なことに、ソフィアにはその部分しか聞き取れなかった。
「そうよ!あんた、伸ばしてるんでしょ?だったらもうちょっと綺麗にしなさいよ。」
あと少し伸ばせば、背中の中心辺りまできそうな長さになった。
髪を長くすれば、女の子らしくなるかと思って、伸ばしてきたのだが・・・・
「そうだね・・・・。ありがとう、イオン。」
このイオンのアドバイスが、違う方向に動くとはイオンは思いもしなかった。
「ソフィア!?」
翌日の夕暮れ時、玄関先でリンの叫ぶ声がした。
それを聞いて、イオンは様子を見に行く。
そこにはいつになくボロボロになったソフィアがいたのだが・・・・
「お前、どうしたんだ!その髪!」
伸ばしていたはずのソフィアの髪が、短くなってしまっていた。
これにはさすがのイオンも驚く。
「髪・・・伸ばしてたんじゃないのか?」
リンが驚きながら、ソフィアの短くなってしまった髪に触れる。
ソフィアはと言うと、ボロボロであるにも関わらず、ニコニコしていた。
「木に引っ掛かって取れなくなっちゃったんだ。」
「だからって・・・」
「うん。でもね、修業の妨げになるなら、仕事の妨げにもなると思ったんだ。」
嬉しそうに彼女は話す。
「あたしは決めたんだ。絶対八代目になるって。髪なんて伸ばしてる場合じゃないんだ!」
つまりこれは、ソフィアがそうじ屋八代目になるという決心の表れだったのだ。
「ソフィア・・・・」
ソフィアはリンに頭をなでられ、まんざらでもなさそうな顔をしている。
そして、イオンは気がついた。
リンが、メロディーに見せていたものとはまた別の笑顔であるということに・・・
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