spy8
ほぼ週に一回のペースで、ジム・ウェイクマンとの密会は行われた。
場所は絶対にウェイクマンの家。
それ以外はなし。
一応お姉様(メロディーおねーさんのことね)とミリアルには内緒って設定だからね。
ウェイクマンはアイリーンに取り入ろうと必死である。
ヤツの家に通い始めて結構たつので、家の構造とかは大体把握している。
わかったことは、ウェイクマンにら愛用のノートパソコンがあるということ。
家にも会社にもパソコンはあるのに、常に一台のノートパソコンを持ち歩いている。
何かあのパソコンに秘密があるのでは……と、あたしたちは目をつけていたが、アイリーンと会っている時もパソコンを手離さない。
今日もそうだった。
あたしとイーサンは忍者のように天井に忍び込み、応接間をのぞいていた。
他愛のない会話を交わしていたが、突然、ウェイクマンがあることを話題にした。
「そういえば……ずっと聞きたかったんだが、君とミリアル・スマイルってどういう関係なんだ?」
「……え?」
アイリーンの表情が固まる。
よくよく考えてみれば……特に決めていなかった。
何という重大なミス……
「まさか……恋仲とか……」
「そ、それは誤解です!そんなんじゃありませんので……」
慌ててアイリーンは否定する。
「だったら何なんだ?」
「し……親戚みたいなもの……です……」
「みたいな?」
「も、もういいじゃないですか、そんなこと。ミリアルの話よりも……もっとあなたのこと教えてくださらない?」
小首をかしげて、少しすねたように言う。
あれはもう……あたしの知っている先輩ではない……
女のあたしより断然、女らしいじゃないか……
その女子力……分けてください……
「いや……でも……」
「でも、何?」
アイリーンは立ち上がり、ウェイクマンの隣に座った。
そして、彼の腕をとる。
「どうしてそんなにミリアルを気になさるの?ひょっとしてやきもち?」
イタズラっ子のような笑みを浮かべ、アイリーンは手を離して再び立ち上がる。
「ふふ。あなたはミリアルがお嫌いのようね。同業者だから?」
本当にあれは先輩なのか……
まあアリエルが乗り移ってるんじゃないかと疑ってしまう。
「そ、そんなことは……」
「あら……どうして隠すの。嫌いならそうとおっしゃってくださって構わないわ。」
先輩……まさか。
何か情報を引き出そうとしている?
あれだけ嫌がっていたのに……体を張ってここまで……!
さすが先輩!あたしらやっぱり先輩だけを尊敬しているよ!
「た……確かに……同業者だからライバル視はしているが……あっちはそうは思ってないだろう……」
「ふーん……」
つまらなさそうにアイリーンは部屋の中をブラブラと歩きまわる。
「……アイリーン……?」
「男の人ってやっぱり仕事のしか考えてないのね。つまらない。」
アイリーンの言葉に、ウェイクマンはハッとした表情になる。
「わ……悪かった。そんなつもりは決して……」
「けれども。」
「?」
「あなたが私に話して楽になれるなら……どうぞ話して。あなたの力になれるのなら、私はどんなことだってするわ。」
すると──、ウェイクマンは立ち上がってアイリーンの手をとり、自分の方へ引き寄せた。
えっ……!?
あたしは思わず息を呑む。
二人の距離が縮まる……が。
「────この本。」
アイリーンはどこから出してきたのか、自分と彼の間に一冊の文庫本を挟んだ。
「私のお気に入りなの。とても面白いのよ。特別に貸してあげるわ、あなたに。」
「あ……あぁ……ありがとう……」
アイリーンはウェイクマンに本を押し付けて、ニヤリと笑った。
「ごめんなさい。もう時間だわ。」
その言葉と共にあたしとイーサンは、いそいそと脱出した。
車に乗って先輩を待つ。
「もうちょっとで何か聞きだせそうだったねぇ。」
「……そうだな。」
「それにしても先輩やるなぁ。美人はいいよねぇ……ほんと。」
一人でベラベラ喋っていることに気がつく。
あれ?何かイーサンが静か……?
「……イーサン?」
「やけに手慣れている気がしたな……」
「えっ?」
手慣れているって……何が?
「何何?何言ってんの?」
「……え?あぁ……気にしないでくれ。」
いやいや気になるでしょ。
「ボルシチ……君はステファニーの出身とか生い立ちとか知っているのか?」
「え……?いいや……」
知らないなぁ。
原則、そういうことは聞かない決まりだから。
「知りたくはないのか?」
「うーん。どっちでも。教えてくれるなら聞くし。自分からは聞いたりしないよ。」
知ったところで過去は過去だからね。
そうこうしているうちに先輩が戻ってきた。
「あっぶね……」
車に乗りなりそう言った。
「あれはやりすぎだ。ステファニー。」
まさかのイーサンからの注意。
「下手をすれば君の正体がバレる。もっと慎重に……」
「わかってる。もうちょっと抑えるべきだった。俺があそこまでやるべきじゃないこともわかってる。」
イーサンはもう何も言わなかった。
あたしもふざけたことを言ってはいけないような気がしたので、黙っていることにした。
リンやのにアイリーンと表記してややこしいでしょうが・・・
すいません。
全部リンなので。
ステファニーもアイリーンも
→spy9へ
参加してます。押していただけると嬉しいです。
にほんブログ村
ほぼ週に一回のペースで、ジム・ウェイクマンとの密会は行われた。
場所は絶対にウェイクマンの家。
それ以外はなし。
一応お姉様(メロディーおねーさんのことね)とミリアルには内緒って設定だからね。
ウェイクマンはアイリーンに取り入ろうと必死である。
ヤツの家に通い始めて結構たつので、家の構造とかは大体把握している。
わかったことは、ウェイクマンにら愛用のノートパソコンがあるということ。
家にも会社にもパソコンはあるのに、常に一台のノートパソコンを持ち歩いている。
何かあのパソコンに秘密があるのでは……と、あたしたちは目をつけていたが、アイリーンと会っている時もパソコンを手離さない。
今日もそうだった。
あたしとイーサンは忍者のように天井に忍び込み、応接間をのぞいていた。
他愛のない会話を交わしていたが、突然、ウェイクマンがあることを話題にした。
「そういえば……ずっと聞きたかったんだが、君とミリアル・スマイルってどういう関係なんだ?」
「……え?」
アイリーンの表情が固まる。
よくよく考えてみれば……特に決めていなかった。
何という重大なミス……
「まさか……恋仲とか……」
「そ、それは誤解です!そんなんじゃありませんので……」
慌ててアイリーンは否定する。
「だったら何なんだ?」
「し……親戚みたいなもの……です……」
「みたいな?」
「も、もういいじゃないですか、そんなこと。ミリアルの話よりも……もっとあなたのこと教えてくださらない?」
小首をかしげて、少しすねたように言う。
あれはもう……あたしの知っている先輩ではない……
女のあたしより断然、女らしいじゃないか……
その女子力……分けてください……
「いや……でも……」
「でも、何?」
アイリーンは立ち上がり、ウェイクマンの隣に座った。
そして、彼の腕をとる。
「どうしてそんなにミリアルを気になさるの?ひょっとしてやきもち?」
イタズラっ子のような笑みを浮かべ、アイリーンは手を離して再び立ち上がる。
「ふふ。あなたはミリアルがお嫌いのようね。同業者だから?」
本当にあれは先輩なのか……
まあアリエルが乗り移ってるんじゃないかと疑ってしまう。
「そ、そんなことは……」
「あら……どうして隠すの。嫌いならそうとおっしゃってくださって構わないわ。」
先輩……まさか。
何か情報を引き出そうとしている?
あれだけ嫌がっていたのに……体を張ってここまで……!
さすが先輩!あたしらやっぱり先輩だけを尊敬しているよ!
「た……確かに……同業者だからライバル視はしているが……あっちはそうは思ってないだろう……」
「ふーん……」
つまらなさそうにアイリーンは部屋の中をブラブラと歩きまわる。
「……アイリーン……?」
「男の人ってやっぱり仕事のしか考えてないのね。つまらない。」
アイリーンの言葉に、ウェイクマンはハッとした表情になる。
「わ……悪かった。そんなつもりは決して……」
「けれども。」
「?」
「あなたが私に話して楽になれるなら……どうぞ話して。あなたの力になれるのなら、私はどんなことだってするわ。」
すると──、ウェイクマンは立ち上がってアイリーンの手をとり、自分の方へ引き寄せた。
えっ……!?
あたしは思わず息を呑む。
二人の距離が縮まる……が。
「────この本。」
アイリーンはどこから出してきたのか、自分と彼の間に一冊の文庫本を挟んだ。
「私のお気に入りなの。とても面白いのよ。特別に貸してあげるわ、あなたに。」
「あ……あぁ……ありがとう……」
アイリーンはウェイクマンに本を押し付けて、ニヤリと笑った。
「ごめんなさい。もう時間だわ。」
その言葉と共にあたしとイーサンは、いそいそと脱出した。
車に乗って先輩を待つ。
「もうちょっとで何か聞きだせそうだったねぇ。」
「……そうだな。」
「それにしても先輩やるなぁ。美人はいいよねぇ……ほんと。」
一人でベラベラ喋っていることに気がつく。
あれ?何かイーサンが静か……?
「……イーサン?」
「やけに手慣れている気がしたな……」
「えっ?」
手慣れているって……何が?
「何何?何言ってんの?」
「……え?あぁ……気にしないでくれ。」
いやいや気になるでしょ。
「ボルシチ……君はステファニーの出身とか生い立ちとか知っているのか?」
「え……?いいや……」
知らないなぁ。
原則、そういうことは聞かない決まりだから。
「知りたくはないのか?」
「うーん。どっちでも。教えてくれるなら聞くし。自分からは聞いたりしないよ。」
知ったところで過去は過去だからね。
そうこうしているうちに先輩が戻ってきた。
「あっぶね……」
車に乗りなりそう言った。
「あれはやりすぎだ。ステファニー。」
まさかのイーサンからの注意。
「下手をすれば君の正体がバレる。もっと慎重に……」
「わかってる。もうちょっと抑えるべきだった。俺があそこまでやるべきじゃないこともわかってる。」
イーサンはもう何も言わなかった。
あたしもふざけたことを言ってはいけないような気がしたので、黙っていることにした。
リンやのにアイリーンと表記してややこしいでしょうが・・・
すいません。
全部リンなので。
ステファニーもアイリーンも
→spy9へ
参加してます。押していただけると嬉しいです。
にほんブログ村
スポンサーサイト
Last Modified :