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個別記事の管理2016-02-22 (Mon)
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遺体はひとまず、地下の食糧庫に運び込まれた。
現場は誰にも入られないように、立ち入り禁止の警察の黄色いテープの代わりに、紐が張られた。
二人の刑事と探偵は忙しく捜査を続けているようだったが、客や従業員たちはすっかり意気消沈していた。
夕食も静かなものとなった。

「……何してるの?」
ミリアルが部屋に戻ってまず発した言葉は、それだった。
「あ。おかえりなさいませ。」
マリーが顔を上げる。
その隣でリンが無言で何かを編んでいる。
ものすごいスピードだ。
「編み物をしていらっしゃるんです。心を無にすることができるみたいです。」
「そう……」
「見てください!私にも編んでくださったんですよ!」
嬉しそうに、マリーは両手にはめたピンクのミトンを見せてきた。
「よく似合っているよ。良かったね。」
「えへへ、ありがとうございます。……あっ。私、そろそろ戻りますね。」
マリーは時計を見て立ち上がる。
「送っていくよ。」
「いえ、そんな。隣ですし……」
「そうは言っても、何かと物騒だからね。」
遠慮するマリーについて、ミリアルは一緒に部屋を出た。
彼女がちゃんと自分の部屋へ戻ったのを確認してから、再び自室に入る。
聞こえているのかいないのか、はたまた見ていないのか。
リンは相変わらず編み物を続けていた。
話しかけても反応がなさそうなので、ミリアルも自分の仕事をすることにした。
ふいに鏡台の前に置かれた物が目に入る。
昼、リンに渡した指輪だった。
ミリアル自身はこれ以上変なことで疑われるのも嫌だったので、諦めてはめていた。
「……ねぇ。せめて、なくさないようにはしておくれよ。」
声をかけてみたが、やはり反応はなかった。
「……聞こえてる?」
「聞こえてない。」
「聞こえてるじゃないか!」
呆れたように言われて、リンはふて腐れた顔になる。
「持っているだけでいいとは言ったけれど、もう諦めてはめておいてよ。その方が怪しまれないし。」
「嫌だ!!」
「やけに頑なだね……」
僕だって嫌だよ。と、ため息をつく。
「……というかさっきはめてみて思ったんだが、キャシーさんはいつサイズを測ったんだろう……」
「……言われてみれば。」
思い当たる彼女の行動が何一つ見当たらない。
ミリアルは自分の秘書に恐怖感を抱いた。
「ん?つまり、さっきまでは指輪をしていたってこと?」
「なっ……ちげーよ!本当に入るかどうか確認しただけだっつーの!バーカ!」
「……。」
あまりにも子ども染みた罵りに、リアクションに困る。
「……何とか言え!」
「……ああ、うん。ごめん。」
出た言葉はそれだけだった。
リンは不機嫌な様子で、編み物を続ける。
「で、指輪はしてくれないの?」
「やれるもんならやってみろよ!」
よくわからない挑発を受けた。
大人気ないなとは思いつつも、その挑発に乗ることにした。
「手、出して。」
「出してと言われて出すやつがあるか。」
それもそうだ。
ミリアルはリンの前に立っていたが、跪いた。
呆気にとられるリン。
そのすきに左手を取り、薬指に指輪をはめた。
してやったり!と、ミリアルは満足気に顔を上げる。
予想に反して、そこには真っ赤になったリンが自分の指を凝視していた。
「ちょっ……何で!?君がやれって言ったんだよ!?」
焦るミリアル。
「こっ……こんなことしてるこっちの方が恥ずかしいんだからね!?」
じわじわと、自分の体温も上がってくる。
お互い目も合わせられず、沈黙が流れる。
「――――お楽しみのところ悪いけど。」
ふいにそんな声がして、慌てて手を離した。
昨夜と同じように、イオンが天井から現れた。
レディ・カトレアの姿ではない。
「イオンちゃん……来るなら事前にそう言っておいてくれよ。」
「次からはそうした方がよさそうね。なんせ、私だけじゃないし。」
「!?」
イオンが部屋に降り立つと、今度はシャルロットが顔をのぞかせた。
「おい、ミリアル!椅子!椅子をよこせ!」
「先生、飛び降りちゃいなさいよ。」
姿は見えないが、アンナの声がした。
「俺、そんなことできないよ!」
怖がるシャルロットのために、イオンが椅子を置く。
人々に支えられながら降りてきたシャルロットの後は、アンナ、ソフィア、ローズ、キャロルと、各部屋の代表の面々が姿を見せた。
ミリアルはこの場から逃げ出したくなった。
「先輩、何してるの?」
動揺しているのか、編み物を再開したリンをソフィアが不思議そうに見ている。
異様な速さ編まれていくその様子を見て、ローズが「まぁ、すごい」と、感嘆の声を上げた。
「みんな集まってどうするんだい?作戦会議?」
「そんなところね。これから、どうやってあの刑事たちを犯人の方に導くかってことよ。」


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