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個別記事の管理2016-03-11 (Fri)
エピローグ

大雪が止み、ようやく外へ出られるようになった。
応援もここまでやって来られるようになり、夫妻は警察車両に乗せられていった。
「ウィリオス先生、捜査へのご協力ありがとうございました。よろしければ僕たちと一緒に乗って行きませんか?目的地までお送りしますよ。」
「お、いいのか。じゃあお言葉に甘えて……」
ノーランについて行こうとしたシャルロットに、ミリアルが声をかけた。
「もう行くのかい、シャルロット君。」
「ああ。乗せてくれるってよ。お前は?」
「キャシー君が迎えに来てくれるって。遅れても仕事は待っているからね。」
ミリアルは肩をすくめる。
「仕事?新婚旅行の間違いじゃないのか?」
「……仕事って何度も言ったよね。第一結婚していないし。」
「でもする予定なんだろ?……って、何だよ。その顔は。」
ミリアルの哀れむような目に、少しイラッとする。
「君って本当……可哀想だよね……」
「あ!?どういう意味だ!それは!」
「くれぐれもシオン君の足を引っ張らないように……」
「ケンカ売ってるのか。」
本気で噛みついてやろうかと思うくらい、ミリアルの目は慈愛に満ちていた。
「フン……それよりいいのかよ。お前の彼女、またあの男と喋ってるぞ。」
「ああ……」
シャルロットが目線を動かすと、ミリアルもチラッとそちらを見た。
「演技だから刑事達の前で言ったのは嘘だよ。」
「……ふーん……」
そのわりにはお前、マジなトーンだったぞ。
という言葉を、シャルロットは飲み込んだ。
「それにあの二人よくケンカしているしねぇ……」
ミリアルの言う通り、ランがリンからの雪玉攻撃にあっていた。
それでもシャルロットは、あのときのミリアルの様子を忘れることができなかった。
こいつは時々、すごく嫌な目つきをする。

「きゃーっ!」
外へ出るなり、マリーがずっこけて真っ白な雪の上に倒れた。
「鈍くさいな……」
リンは呆れた目で見下ろす。
「大丈夫?マリーちゃん、僕の手に捕まって。」
すかさずランが手を差し出す。
イラッときたリンは、大きめの雪玉を作り、ランの顔に思いっきりぶつけた。
雪の上に倒れていく、ラン。
「ふふ。雪合戦、楽しそうねぇ。」
「今のどこが楽しそうに見えるんだ。」
「ふふふ。」
ニコニコしながら、ローズがマリーに手をさしのべた。
「リン!テメェー!」
「うるさい。わめくな糸目。こっちはお前のせいで散々だったんだよ。この狐目が。」
「はぁ!?お前の方こそ何なんだよ!ちゃんと説明しろ!アリエルって誰だ!」
隠しておく必要などないが、ローズや他の連中がいる前でその名を出してほしくなかった。
ローズは案の定首をかしげているし、キャロル辺りに聞かれたら面倒だ。
「う……うるさい!うるさいうるさいうるさい!」
「うわ!やめろ!痛い!冷たっ!」
リンは次々に雪玉を投げた。
「お前のせいで浮気者扱いされるしっ……台無しだよ!バーカバーカ!終いにはマリーを口説きやがって!初恋の人はどうした!この色ボケ!」
「う、うるさいな!お前じゃなきゃとっくに結婚まで持ち込んでたさ!」
「―――俺で悪かったな!!」
再び顔面に雪玉がヒットした。
「人を壁際に追い込んでおいてっ……よくもそんなことが言えたな!」
「……だったら何て言えばいいんだよっ……」
冷たさや痛みでヒリヒリする顔を押さえながら、ランは起き上がる・
「ずっと好きでした。僕とつきあってくださいとでも言えばいいのか!?」
半分ヤケだったが、リンは面食らって言葉を失う。
だが、すぐに真顔に戻った。
「それは……ちょっと。」
「……は?」
「ダーリンがいるから。無理だわ。」
「……。」
売り言葉に買い言葉で言った告白なのに、ふられた。
ものすごく腹が立つ。
しかしこの怒りをどこにぶつければいいのかわからない。
「悪かったな!何やら期待をさせてしまったようで!生憎超ラブラブでしてね!ねぇ、ダーリン!」
たまたま近くに来ていたミリアルの元まで走って行き、その腕に絡みつく。
「……え?何?」
「―――……。」
絶対聞こえていたはずなのに、ミリアルは間抜けな声を出しただけだった。
「―――無関心かッッ!!」
恥ずかしいやら何やらで、リンはミリアルを蹴り飛ばした。
ぼふっ!と、ミリアルは雪の上に倒れた。
「ぶはぁっ!冷たっ!いきなり何をするんだ!君は!」
雪から起き上がり、肩息をしながらミリアルは叫ぶ。
「バカ!アホ!あんぽんたん!」
今度はミリアルに雪玉をぶつける。
「痛い!やめてよ!何で怒ってるの!?」
「うるさい!バカ!!」
リンの体力が続く限り、ミリアルは雪玉を当てられ続けた。

「何やってるんだろう?あの二人。」
そんな二人を遠くから眺めるソフィア。
「仲がいいのは良いことだ!」
「バカが染るから見ない方がいいですよ。」
後ろからイーサンとウィルが口々に言った。
「ソフィア!君とまた離れ離れだなんて……くっ……俺はっ……!」
そこへやって来たキャロルを「はいはい」と、軽くあしらう。
「……そういえば。」
イーサンが思い出したかのように、声を上げた。
「電話線が切られていたな?あれもスタンリー夫妻の仕業なのだろうか?」
「言われてみれば……でも、そういったことは言っていませんでしたね。」
「ああ……それなら。」
なぜかキャロルが挙手した。
「俺が切った。」
「!?」
驚異の目を、彼らは向ける。
「な……何のために……?」
スノーがおそるおそる尋ねた。
「その方が面白いかなって。」
「面白くない!何やってんの、あんたは!本当、バカだね!」
ソフィアに罵倒され、キャロルは笑顔のまま硬直した。
「キャロル様……」
スノーが揺さぶるが、反応はない。
「やれやれ。呆れた子ね。まさかそんなイタズラをしていただなんて。」
いつの間にか、アンナがソフィア達の後ろに立っていた。
「あんた達!帰るならさっさと帰りなさい!こっちはまだ仕事が残っているのよ!ほら、早く行った行った!」
「アンナさん……まだ警察が近くにいるし、あんまり大きい声を出さない方が……」
慌ててそういったソフィアの声は彼女には届いていないようだった。
「……あれっ?イオン、あんたまだその姿なの?」
レディ・カトレアの姿を発見し、ソフィアは声をかけた。
「まぁね。警察がいる手前、やめるわけにもいかないし。」
「そっか。」
納得したところへ、一台の車が滑り込んでくる。
「迎えが来たようね。」
見ると、運転席から眼鏡の女性が降りてきた。
ミリアルの秘書、キャサリンだった。
「キャシーさん!」
シャルロットが駆け寄っていく。
「あら、先生。奇遇ですわ。こんな所で。」
「ミリアルの迎えか?」
「ええ。――マリー!荷物を積んでちょうだい!」
彼女は少し離れた所にいるマリーに言った。
「それで。あの人はどこかしら?」
「ミリアルのやつなら……」
相変わらず雪を投げつけられている、彼を指さす。
キャサリンはため息をつくだけで、特に動じない。
「なぁ、キャシーさん……俺、あいつがまさか婚約しているとは思いもしなかったんだけど……」
「婚約?――ああ……なるほどね。私の渡した物が役に立ったということかしら。」
「?」
独り言を言う彼女に、シャルロットは首をかしげる。
「可愛いでしょう?」
「は?」
とてもいい笑顔で親指を突き出されたが、何のことやらわからない。
「料理がとても上手なのよ。」
「へ……へぇ……」
それはどこかでも聞いた気がする。
「こらぁーっ!そこー!いつまでもいちゃついていないで、さっさと行くわよー!」
クエスチョンマークだらけになっているシャルロットはさておき、キャサリンは二人に向かって叫んだ。

リンもミリアルも息切れだった。
「き……気は済んだかい……?」
リンはその問いに答えない。
それよりも、ある重大な事実に気がつき、震えていた。
「すげぇ疲れた……こんなことで……。何か……体力落ちた……!?」
「……。」
ミリアルは聞こえなかったふりをした。
そんなとき、キャサリンが遠くから叫ぶ声が聞こえてきた。
「キャシー君が来たみたいだね。」
「……ああ……」
立ち上がろうとするミリアルに手を差し出す。
「ありがとう。」
掌にミリアルの手が重なった瞬間、リンの体が傾いた。
息をつくまもなく、冷たい雪の上に倒れていた。
「―――テメェッ!」
すぐさま顔を上げて、ミリアルをにらむ。
彼は何がおかしいのか、ケラケラと笑っていた。
仕返しのつもりなのだろうか。
「冷たいけど、気持ちいいね。」
ミリアルはパタンと仰向けに寝転がる。
「ほら、見て。昨日まであんなに荒れていたのが嘘みたいに、晴れているよ。」
「……どうしたんだ、お前……」
おかしな物でも食べたのかと、少し心配になる。
「何だか楽しくなってきたよ。雪の上にこんなふうに寝そべるのは初めてだ。」
「……俺も……初めてだけど……」
寒いのは苦手なので、どちらかといえば家に引きこもっていたいタイプだ。
「ごめんね。せっかく楽しみにしていたみたいなのに、こんなことになっちゃって。」
「!?……べ、別に……お前が謝ることじゃあ……」
楽しみだなんて一言も言っていないのに、そう言われてドキッとする。
「僕は仕事だけれど、向こうでは楽しんでよ。」
リンは何も言わなかった。
その横顔がほんの少し暗いことに気がついたが、また気がつかないふりをした。
「……俺、家で留守番していても良かったんじゃないか。」
上半身を起こし、リンはポツリとつぶやいた。
言うだけ言って、立ち上がり逃げようとしたその腕をミリアルはつかむ。
「――ダメだよ、それは。」
今度は聞こえないふりをしなかった。
「一人じゃさみしいだろう?」
「なっ……」
予想外の返答に、思わずふりむく。
彼は微笑んだ。
「君はさみしくない?」
「な……んなわけねぇだろ!」
リンはミリアルを突き飛ばした。
再度雪の上に倒れるミリアル。
彼は走って行くリンの頬が、少し赤くなっているのを見逃さなかった。

「……何だろう、この敗北感は。」
雪の上でランはボソッとつぶやいた。
「ランちゃん、どうしたの?」
後ろからローズが声をかけるが、聞こえていないらしい。
「……僕が一番近くにいる存在だと思っていたのに。」
ぽつり、ぽつりと、独り言をこぼす。
「性格も、考え方も……違うけど。似た名前を付けられて。ムカつくっていつも思っていたのに。顔を合わせばすぐにケンカになるし。……でも、僕の話を聞いてくれて。心のどこかで、僕はあいつと距離を縮めることができたと思っていたんだ。……けれど。」
「……ランちゃん……」
「僕は……あいつのことを何も知らない……」
ひどく絶望した様子で、ランはうなだれた。
声をかけようとして、ローズは伸ばした手を引っ込める。
ランには悪いが、このまま状態がベストだと悟ったからだ、
「……そう……いいのよ、これで……あの人の側にいれば……リンちゃんは……」
あることを思いだし、震え始めた体をさする。
「大丈夫……大丈夫よ……きっと……」
自分に言い聞かせるように、何度も小さくつぶやいた。

【おわり】



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