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個別記事の管理2016-12-02 (Fri)
advance10

教えてもらったのは、古い食堂だった。
お昼のピークは過ぎていたせいか、お客さんはほとんどいない。
常連さんと思しき人達が、世間話に花を咲かせている。
「珍しいわね……。村で食事を取りたいだなんて」
ハンカチで汗をぬぐいながら、ツアーガイドのお姉さんは言った。
「あなたはこの村の出身なのか?」
「ええ。生まれも育ちもここよ。みんな村の外へ出て行っちゃったけど、私はずっとここにいるわ」
「好きなんだね。この村が」
「……そうね」
彼女はふっと、肩の力を抜いて微笑んだ。
「私はリディアって言うの。村役場の観光課で働いていて、ツアーガイドも兼任しているの」
「あたしはソフィア」
「俺はイーサンだ」
「よろしくね」
あたしたちは、それぞれ握手を交わした。
「あなたたちは、トネールランドが目的でここへやって来たんじゃないの?」
「あたしたちはランドのスタッフだよ」
「短気アルバイトみたいなものだ」
彼女は、驚いた表情になった。
「そうだったんだ……。それで、ランド内の食事は嫌だったってわけね。それもまぁ珍しい話だけれども」
「単にあたしの気持ちの問題だよ。せっかくいい感じの村に来たのに、あんな所でご飯食べてもつまらないじゃん。ランドで食べられるものは、どこでも食べられるものでしょ。でもあたしは、この村でしか食べられないものを食べたかったんだ」
リディアさんはさらに目をパチクリさせた。
「……そういうふうに言ってくれる人がまだいるなんてね」
「ん? あたし何かおかしなこと言った?」
「ううん。嬉しかっただけ」
彼女は微笑んだが、なぜか少しさみしげだった。
「さっきも言ったようにね……若い人達はみんな、都会での生活や仕事に憧れて、この村を出て行ってしまったのよ。ご覧の通り、残っているのはお年寄りばかり」
確かにこのお店に今いるお客さんも、年齢層が高めだ。
「事情は大体把握している。村に活気を戻すために、あの遊園地を建てることを承諾したのだろう」
「……ええ」
リディアさんの表情が暗くなった。
「あなたの言う通りよ。このまま若者が村から離れてしまえば……いずれトネール村は地図から消えてしまう。それは何としても避けたかった。そんな折りに、村を出て一人企業を興した彼が戻ってきた」
その“彼”が誰なのかは、言われなくともすぐに見当がついた。
「彼は村に活気を取り戻すために、都会へ出たと言ったわ。持ち帰った打開策が、巨大遊園地の建設」
トネールランドのことだね。
大体聞いていた話と、経緯は同じだった。
「遊園地なら、あらゆる年齢層の人を呼び寄せることができる。そして訪れた人達が、この村の良さに気がついてくれたら、また村に人が集まってくる……それが私達の狙いだった」
蓋を開けてみれば、やって来た人々は村には興味なし。
ランドの中で夢の一時を過ごして帰って行くだけ……
「私たち村人を労働者として雇ってくれるわけでもない、村興しどころかこっちは村の自然を犠牲にしただけ。私はこうやってツアーガイドなんてやっているけど……みんなはもう……何も期待しなくなったみたい」
何となく周囲を見渡すと、あたしたちの話を聞いていたようで、お店の人もお客さんも暗い顔をしていた。
「……どうしてこんなことになっちゃったのかしら。あいつも、私たちも。この村が大好きで、守りたいという考えは同じだったはずなのに」
リディアさんの見せた笑顔は、何だか悲しそうだった。
「ごめんなさいね。ご飯を食べているときにこんな話をして」
「ううん。お姉さんがどれだけ村のことを思っているのか、わかったから」
この村の人達は今、幸せじゃないのかもしれない。


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